樽のモデルとアミノ酸スコアによるタンパク質の摂取方法は?

タンパク質(アミノ酸)の摂取量を考える時に、「樽のモデル」という考え方があるのを知っていますか。
樽のモデルを理解することとアミノ酸スコアを知っておくことが、タンパク質の摂取方法を考える際の基本。
それぞれがどのような意味なのか、子供の骨を伸ばし、身長を伸ばすために必要なタンパク質の情報についてまとめて解説します。
アミノ酸の摂取量の基本になる樽のモデルとは?
タンパク質を構成するアミノ酸をしっかり摂取するためには、「樽のモデル」という考え方を理解しておくことが大切です。
自然界にあるアミノ酸は約500種類もありますが、人間に必要なタンパク質を構成するアミノ酸は20種類しかありません。
この20種類のアミノ酸が人間を構成するために必要なタンパク質の原料になりますので、普段の食事で摂取するか、体内で合成することが必要です。
体内を構成する20%はタンパク質で、60%が水分、15%が脂肪、残りの5%が糖質やその他の成分だと言われています。
人体を構成する20種類の詳細は、
BCAA(バリン・ロイシン・イソロイシン)、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、アラニン、プロリン、システイン、リジン、スレオニン、アスパラギン、フェニルアラニン、セリン、メチオニン、グリシン、チロシン、ヒスチジン、トリプトファン
こう書かれてもわからないかもしれませんが、アミノ酸は食事で摂取すべき必須アミノ酸(9種類)と、食事で摂取しなくても体内で合成できる必須アミノ酸(11種類)に分類されます。
ただ子供の場合は成長ホルモンの合成や分泌に必要なアルギニンを合成する力が弱いので、アルギニンも必須アミノ酸だと考えるべきでしょう。
必須アミノ酸は必ず食事で摂取すべきもので、樽のモデルはこの必須アミノ酸の摂取量に対して重要な影響を与えるもの。
アミノ酸不足、タンパク質不足で身長が伸び悩むことがないためにも、樽のモデルについてしっかり理解しておきましょう
樽のモデルというアミノ酸にある性質とは?
アミノ酸の吸収率に関する性質を表したのが「樽のモデル」という考え方。
長さの異なる9枚の板で樽を作って上から水を注いだ時に、最も長さの短い板よりも上に水面が上がれば、そこから水が漏れてしまいますよね?
同じことがアミノ酸でも起こります。
どれだけ食事で大量のアミノ酸を摂取しても、最も摂取量の少ないものに比例した分しか吸収できず、いくつかが突出していてもそれは体内に吸収することができません。
言い換えると、食べていないのと同じ状況になるので、アミノ酸は大量に摂取することよりも、バランス良く摂取することが優先されます。
アミノ酸のバランスは、肉類や卵などの動物性タンパク質でアミノ酸スコアが100点を超えるものが多く、小麦やトウモロコシなどの植物性タンパク質は、100点以下のアミノ酸スコアばかり。
植物性タンパクでアミノ酸スコアが高い大豆でも86点ですので、どれだけ体内に吸収できないのかということがわかります。
ただ動物性タンパク質ばかり摂取していると体内が酸性に傾いて、免疫力が低下し病気になりやすくなったり、肥満や生活習慣病などの原因になるので注意が必要でしょう。
食品別のアミノ酸スコアがどうなっているのか?いくつかの食材を参考に紹介すると・・・
アミノ酸スコアの基本的な考え方と食材ごとのスコアは?
アミノ酸スコアとは、最高が100点で必須アミノ酸のバランスを示す指標のこと。
肉類にはアミノ酸スコアが100点のものが多いですが、どれを選ぶかで摂取できるアミノ酸の状況は変わりますので、100点だからと安心すべきではないでしょう。
食材ごとのアミノ酸バランスの違いを理解して、多いものと少ないものを組み合わせて、より優れたアミノバランスに変えることが大切です。
実際にどのようなバランスなのか、いくつかの食材を参考にアミノ酸スコアの内訳を紹介すると・・・
牛乳のアミノ酸スコアの内訳は?
- イソロイシン:136
- ロイシン:141
- リジン:153
- 含硫アミノ酸:106
- 芳香族アミノ酸:142
- スレオニン:104
- トリプトファン:136
- バリン:132
牛乳のアミノ酸スコアは100点です。
豚肉のアミノ酸スコアの内訳は?
- イソロイシン:124
- ロイシン:116
- リジン:168
- 含硫アミノ酸:114
- 芳香族アミノ酸:124
- スレオニン:116
- トリプトファン:127
- バリン:106
豚肉のアミノ酸スコアは100点です。
アジのアミノ酸スコアの内訳は?
- イソロイシン:116
- ロイシン:114
- リジン:171
- 含硫アミノ酸:118
- 芳香族アミノ酸:126
- スレオニン:116
- トリプトファン:117
- バリン:103
アジのアミノ酸スコアは100点です。
鶏肉(全部)アミノ酸スコアの内訳は?
- イソロイシン:136
- ロイシン:125
- リジン:132
- 含硫アミノ酸:162
- 芳香族アミノ酸:153
- スレオニン:116
- トリプトファン:157
- バリン:135
鶏肉(全部)アミノ酸スコアは100点です。
ほうれん草のアミノ酸スコアの内訳は?
- イソロイシン:72
- ロイシン:73
- リジン:68
- 含硫アミノ酸:50
- 芳香族アミノ酸:105
- スレオニン:68
- トリプトファン:187
- バリン:97
ほうれん草のアミノ酸スコアは50点(含硫アミノ酸)なので、単体で食べた場合、それ以上の分は体内に吸収されません。
大豆のアミノ酸スコアの内訳は?
- イソロイシン:116
- ロイシン:107
- リジン:115
- 含硫アミノ酸:86
- 芳香族アミノ酸:142
- スレオニン:92
- トリプトファン:132
- バリン:97
大豆のアミノ酸スコアは86点(含硫アミノ酸)なので、単体で食べた場合、それ以上の分は体内に吸収されません。
小麦粉のアミノ酸スコアの内訳は?
- イソロイシン:88
- ロイシン:98
- リジン:38
- 含硫アミノ酸:118
- 芳香族アミノ酸:124
- スレオニン:64
- トリプトファン:110
- バリン:81
小麦粉のアミノ酸スコアは38点(リジン)なので、単体で食べた場合、それ以上の分は体内に吸収されません。
精白米のアミノ酸スコアの内訳は?
- イソロイシン:100
- ロイシン:114
- リジン:65
- 含硫アミノ酸:132
- 芳香族アミノ酸:153
- スレオニン:84
- トリプトファン:145
- バリン:123
精白米のアミノ酸スコアは65点(リジン)なので、単体で食べた場合、それ以上の分は体内に吸収されません。
アミノ酸スコアから考える食品の組み合わせは?
アミノ酸スコアを見ると、穀物類にはリジンが少なく、豚肉やアジには大量のリジンが含まれていることがわかります。
豚肉やアジも単体で食べるよりも、リジンが不足している小麦粉や精白米と組み合わせて食べることで、アミノ酸スコアが改善し体内への吸収量が増えるということ。
ほうれん草は含硫アミノ酸が少ないですが、鶏肉と合わせることで含硫アミノ酸だけではなく、リジンとスレオニンの状況も改善することがわかりますよね?
このように食材を組み合わせる際に、アミノ酸スコアを意識することで子供の成長に必要なタンパク質をしっかり体内に吸収することができ、栄養面から成長をサポートすることができます。
健康を考えた時に野菜類をしっかり摂取することは大切ですが、野菜だけではタンパク質が不足し、しっかり成長できないこともわかったでしょう。
アミノ酸スコアを改善するためには、様々な食品や食材を組み合わせて摂取することが大切ですので、偏った食生活ばかり続けないように注意してください。
ご飯やパン、うどんだけでも身長を伸ばすことはできない!
食事をしっかり食べているから、うちの子供は将来的に大きく成長すると考えるお母さんも多いですが、ご飯やパン、うどんなどばかり食べていては意味がありません。
ご飯1杯のタンパク質は約2.9gですので、もし仮に1日3杯のご飯を食べても摂取できるタンパク質はわずか8.7gほど。
仮にご飯を1食で2杯にしても17.4にしかなりません。
10歳の子供のタンパク質の推奨摂取量は1日75gなので、どう考えても推奨摂取量には届きません。
さらにアミノ酸スコアで考えると、体内に吸収することができるのは65%程しかありませんので、吸収量で考えると非常に少ないことがわかりますよね。
ご飯を食べることも大切ですが、おかずをしっかり食べてアミノ酸スコアを整えることが大切ですし、逆におかずばかり食べていてもダメなんです。
肉類や魚介類を食べればアミノ酸スコア的には良いですが、糖質を摂取しないとタンパク質がタンパク質として使われず、糖質の代わりにエネルギー源として使われてしまうことに。
いずれにしても組み合わせが重要ですので、偏った食生活を続けないようにしましょう。
樽のモデルとアミノ酸スコアによるタンパク質の摂取方法の記事まとめ
樽のモデルと言われると少し難しい話のように聞こえますが、簡単に言えば組み合わせが大切だということ。
動物性タンパク質と植物性タンパク質を組み合わせ、さらに穀物類や野菜類もしっかり食べるようにすれば、アミノ酸スコアと摂取カロリーのバランスは良くなります。
アミノ酸スコアの悪い食生活を続けていれば、子供の骨が伸びることもなく、身長を高くすることはできません。
成長期で身長が伸び悩んでいるのなら、アミノ酸スコアが低く、アミノ酸のバランスが悪い食生活で過ごしいる可能性もあるでしょう。
そういった子供の場合は、樽のモデルを意識してアミノ酸スコアを改善してあげることで、身長の伸び方が大きく改善されることもあります。
いずれにしても、タンパク質を構成するアミノ酸をしっかり摂取できなければ、子供の身長が伸びることはありませんので、普段の食事を改善してください。
身長を伸ばすためにも、健康で丈夫な子供に育てるためにも人体の2割を構成するタンパク質(アミノ酸)の摂取は基本ですよ。