子供の低身長の原因と治療方法は?

子供が低身長になってしまう原因には、一体どのようなものがあるのか、実際の治療方法や検査方法などを簡単に解説します。
低身長治療も医学の進歩とともに、かなり良い結果を残すことができるようになってきましたが、大切なのは治療を開始する時期でしょう。
治療開始時期が大事だというのはどういう意味なのか、現在の治療効果はどのような状態になっているのかをまとめて紹介します。
目次
子供が低身長になる原因となる病気は?
子供の身長が低身長で止まってしまう原因には、特定の病気によるものと、病気以外の体質的な影響を受けるものに分けることができます。
一般的に低身長になる病気には、
- ホルモンの分泌異常
- 低出生体重児
- 染色体の異常
- 主要な臓器の異常
- 骨や軟骨の形成異常
- 心理的な原因によるもの
これらの種類に分けることができると考えられていますが、実際にどのような病気があるのかといえば、
ホルモンの分泌異常が原因で起こる低身長とは?
ホルモンの分泌異常が原因で起こる低身長には、成長ホルモン分泌不全性低身長症や甲状腺機能低下症などがあります。
成長ホルモン分泌不全性低身長症は突発性で原因不明なものが多く、遺伝の影響で起こることは稀で1歳前後から発育が遅くなり、2歳以後に-2SDを下回ってしまう傾向が強く出ます。
甲状腺ホルモンも子供の成長に影響しますので、甲状腺機能低下症の場合は、内服薬を使用した治療法を実践すればそこまで重篤な影響は出ないでしょう。
低出生体重児が原因で起こる低身長とは?
お母さんのお腹の中にいる期間に比べて出生児の身長や体重が標準よりも低く、身長と体重の両方が同世代の10%未満に当てはまると、SGA性低身長症と診断されます。
SGA性低身長症の場合でも、9割前後の子供は3歳位までに平均の成長率に追い付きますが、1割ほどの子供は十分に成長することが出来ません。
SGA性低身長症の子供で成長が遅れていても、3歳以上で定められた条件を満たす場合には成長ホルモン治療が可能ですので、お子様の成長度合いに合わせて随時診察を受けましょう。
染色体の異常が原因で起こる低身長とは?
染色体異常で起こる低身長には、ターナー症候群やプラダー・ウィリー症候などの病気と診断されることがあります。
ターナー症候群は女子の低身長の原因になることが多く、2本あるX染色体のうち1本がないか、異常が起こっていることが原因で、低身長女子の5~10%が発症。
ターナー症候群を発症すると、第二次性徴期も成長スパート期も起こらないので10歳位から急激に背が低いことを自覚してしまいますので注意してください。
プラダー・ウィリー症候は15番染色体の変異が原因で起こる疾患で、10000人〜15000人に1人と非常に稀な症状。
筋肉量が少なく肥満傾向が強まったり、コミュニケーションに問題が起こりやすいので、社会適応性も低い傾向があります。
主要な臓器の異常が原因で起こる低身長とは?
心臓や腎臓、肝臓や消化器などの主要な臓器に異常や問題があると、身長が伸びにくい傾向が強まります。
肝臓がしっかり機能していなければ、成長ホルモンの分泌によって合成されるソマトメジンCを作れずに、骨端線の細胞分裂を活性化することが出来ません。
消化器に問題があれば食事で摂取した栄養素を吸収できずに、栄養不足が成長の足をひっぱることもありますし、心臓に問題があれば全身に新鮮な血液を送ることが出来ませんので、これらも低身長の原因になります。
骨や軟骨の形成異常が原因で起こる低身長とは?
骨や軟骨にの形成異常が起こると、成長ホルモンがしっかり分泌されていても身長を伸ばすことができません。
軟骨無形成症と呼ばれる疾患が代表的で、10万人に3〜4人発症しますが、その8割が突発性で遺伝による影響が少ない傾向があります。
軟骨無形成症の子供は高確率で低身長になり、さらに四肢がかなり短くて大腿骨や上腕骨の短さが目立ち、おでこの大きな顔つきも特徴的。
軟骨無形成症を発症し−3SD以下の低身長だと小児慢性特定疾病の医療費助成制度の対象になり、成長ホルモン療法を受けることができます。
心理的な影響が原因で起こる低身長の病気は?
心理的な影響が原因で低身長になるのは、愛情遮断症候群が有名でしょう。
両親や家族から十分な愛情を受けることが出来ず、身体的・精神的な虐待を受けて育った子供に多い傾向があります。
戦後の戦災孤児に多かった症状ですが、最近は子供との関係性をうまく構築できないお母さんが増えていることもあり、増加している低身長の原因のひとつ。
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家族性低身長症や特発性低身長症など体質による低身長もある
病気以外にも体質的に低身長になる子供もおり、家族性低身長症や特発性低身長症などと呼ばれています。
家族性低身長症とは、父親と母親の両親の両方か、そのいずれかに病気以外の低身長の人がいて、それをきっかけに子供が低身長で止まってしまうことですが、発症割合は低いと考えられています。
特発性低身長症(体質性低身長症)とは、特に原因がない(原因不明)のに何故か低身長で止まってしまう症状で、家族性低身長症よりも多くの割合で発症すると考えられています。
成長ホルモン分泌刺激試験の方法や費用は?
成長ホルモン分泌刺激とは、成長ホルモンが十分に分泌されているのかを確認するために行う検査のこと。
検査を受けるためには、前日の午後10時以降は絶食で、検査当日もお茶か白湯、お水しか飲むことができません。(ジューズや牛乳はNGです。)
成長ホルモン分泌刺激試験では、
- インスリン負荷
- アルギニン負荷
- L-DOPA負荷
- クロニジン負荷
- グルカゴン負荷、または GHRP-2負荷
これらの中から2種類の試薬を選んで、服薬や点滴によって体内に取り入れて、30分後ごとに2時間採血して、血液中の成長ホルモン値を測定します。
成長ホルモン分泌刺激試験を含む低身長全般の検査には、成長曲線と問診の作成、レントゲン検査、血液検査、尿検査などで7,000円前後の費用負担が目安でしょう。
ただ一部の自治体では6歳児までの低身長検査なら無料で行っている場所や、一部補助金が出る場合もありますので、お住まいの自治体に問い合わせてみてください。
低身長のホルモン治療を行った結果は?身長は伸びる?
成長ホルモン分泌刺激試験の結果、成長ホルモンの分泌量に問題があり、成長ホルモンを使った治療方法を実践する場合は、自分で寝る前に成長ホルモンを注射して行います。
この治療法を実践すると、最初の3ヶ月は食事量が増えたり、運動しても疲れにくくなったり、熟睡できるようになる効果を実感します。
特に治療1年間の成長率が高くて、5〜10歳の子供なら平均の1.5倍位(5cm前後)も身長が伸び、2年目以降は徐々に伸び幅が落ち着き、3年目で平均身長に追いつく傾向があります。
ただ最終的な身長の高さは5年継続しても、男子は160.3cm、女子は147.8cmと治療後でも−2SDの範囲内に収まってしまう特徴が。
なぜ成長ホルモンを注射しても平均身長まで届かない子供が多いのかといえば、病院に来た段階で、すでに骨端線が十分に残されていないから。
低身長治療に関する認知度が低く、本当に悩んでから最後に病院に来るような傾向が強いので、治療を始める時期が遅くなり十分な効果を実感できません。
治療開始年齢が早ければ早いほど良い結果が出ますので、お子様の低身長が気になるのなら、成長期を迎える前のできるだけ早い段階で検査を受けるようにしてください。
子供の低身長の原因と治療方法の記事まとめ
子供が低身長になってしまう原因には、病気をきっかけにしたものや体質が原因になるものがありますが、原因がわかれ治療法も見つかります。
低身長の子供の治療で一番のネックは費用的な部分かもしれませんが、医学的低身長の場合には、治療費の補助を受けることも出来ますし、医療費控除も活用できるでしょう。
いずれにしても低身長の原因を早めに解明し、少しでも早い年齢で治療を行うことが、低身長の子供が平均身長まで背が伸びる唯一の方法です。
ホルモン治療が必要になるのかは、検査結果次第ですし、医師から食生活のアドバイスを受けるだけでも、お子様の成長にメリットはあるでしょう。
骨端線が閉鎖してしまえばホルモン治療も効果が期待できませんので、取り返しのつかない状況になる前に、一度病院での検査を受けることをおすすめします。